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右往左往するアラサ―女子の、気ままな備忘録・雑記です。

父方の祖母もとい、ババアのこと

■90近くになる父方の祖母

世界で一番嫌いだ。
「嫌いな人はいる?」と聞かれたら、「ババア」と即答してしまうくらい嫌いだ。
だからこの文章の中でもババアと書く。身内のこと悪くいうもんじゃないよなんて寝ぼけたことは私には言えないからだ。

野山をかけめぐる幼い私の姿を見て、「そんなやんちゃくちゃなら、ユキはいっそ男ならよかった」と、
「女だてらに勉強ができて/大学に行って/そんなに働いて何になる、早く嫁にいけ」と、
「ぎっちょ(左利き)はみっともない、直せ、嫁に行けないぞ」と言われてきた。
そして、ババアはいわゆる折檻型のアクションをとる人だったので、幼い私は9歳くらいになるまで、母のいない所にひっぱりこまれてつねられたり蹴飛ばされたり、倉庫に閉じ込められたり、箒の柄で突っつかれたり、火鉢の熱いトングみたいなのでぶん殴られたりした。

私は、子供の時から、
「うるせぇなババア」「早く死ねババア」「おめーなんかに負けねぇぞクソババア」と思って生きてきた。
まぁ多少は言うこと正しいんだけどね…左利きは昔の人にとっては忌み嫌われているし。

更に私への意地悪に重ねて、母に対しての嫁いびりがマジですごかった。(数年前、母は姑を断捨離した。言わば、ほぼ絶縁である。)

「ユカさん(母)に芋の皮を剥かせたら、たべるとこがなくなる!」とチクリっと言うなどもお手の物。

幼い私は、
「おばあちゃん、ママにいじわるやめて!芋がなくなるわけないでしょや!」「おばあちゃんがママをいじめるから私はずっと横にいる」と反逆していた。

大人になった今思えば、嫁をいびって嫁は耐え忍ぶのに横でその孫が反論するというのは、ババアとしてはなおのことムカついたのだろう、まぁ昼ドラさながら母をいじめまくった。
そんじょそこらの昼ドラ観てもおどろかないくらい、それはそれはすんごかった。

■父が見た2世代に渡る嫁いびり

さて、今回の年末年始、そんなクソ祖母に生まれた私の父と私が二人きりになる時間があった。

話のきっかけはなぜだったか忘れたが、父がふと、
「僕は婆さん(私の曾祖母)子でなー。あまりに婆さんが僕を可愛がるもんだから、ババア(紛らわしいが、私の祖母)は僕に八つ当たりしたね。まぁ今言う嫁姑バトルが婆さん間にあったんだね」
と言った。

そして、父は、
「ババア(私の祖母)は婆さん(私の曾祖母)に台所に立っては、『あんたに芋の皮を剥かせたら、たべるとこがなくなる!』って言われてたよ。」
と言った。

私は驚いて、
「えっ、それ、ババア(私の祖母)がママに昔言ってたよ!」
と言った。

すると、父は、
「うわマジで。知らなかった。ババア(私の祖母)、姑にされたことを嫁にやり返したんだな…」
と心底驚いた顔をしていた。そりゃ男には分かるまいて。

■ババアは語る、不器量なことへの恨みを

私は父とババアの話を話したことで、昨年ババアが私の顔を見てふと語り出したことを思い出した。

私の妹の結婚式の際、美容室で待ち時間があった時のことだった。
「私は器量が悪いから、嫁になかなかいけんくてね。お見合いを百回くらいしたんじゃないかい。最後はお父さんがたいそう見事な日本刀を見返りにして、おじいちゃんに私の見合いを取りつけてくれたんだよ。30で最初の子が生まれるなんて、今で言うきっと45歳くらいで産んでるようなもんさね。」
私は、「ほーん?」と生返事をした。

ババアは続けて、
「トーチ(私の父)がユカさん(私の母)を連れてきた時ね、『ああ、トーチは不器量な母親が余程嫌だったんだな、代わりにこんな綺麗で女優さんみたいな娘さん連れてきた』と思ったさ」

私は何の話やねんと訝しんだが、ババアは更に続けて話した。
「ユキもユナ(私の妹)も、ユカさん(私の母)に似て、器量が良くてよかった。トーチ(私の父)はおじいちゃんに似て、いい男だからね。ユキもユナも不器量になるわけはないんだけど。」

そして、ババアは、私の手を握って、目を見て言った。
「不器量ってのはねぇ、ほんにとんでもない劣等感になるさ。トーチもユカさんもあんたも、私の気持ちはわかるまいよ。あんた方は不器量なんて言われたことも、思い患ったこともないだろう!」
その目は、気迫は、90になろうとする婆さんのそれではなかった。若い女の持つ劣等感そのものだった。

私はババアに、
「そうだね、私は自分の容姿なんて大した気にかけたこともないさぁ、どうでもいいさ」
とつっぱねてやろうとして、言った。

つっぱねたつもりだったのに、ババアは、
「それがいいんだ、それがいいんだよ。ユカもユナも綺麗な子でほんに良かったさ、不器量などと他人に言われずに生きていけるだろう。ユカもユナも、おばあちゃんが感じてきた不器量への劣等感を感じずに生きて欲しい。女は器量よしがいいさ、よそ様に不器量だと言われるほどに女は心がひんまがってしまうんだよ」
と言った。
※私は至って普通の凡庸とした容姿である※

■ババアもまた、誰かに傷つけられて傷ついてきた

ババアは、若い時に見合いをする度、
「肺病み(結核)やって、年増でそのうえこんな不器量なんて俺は嫌だ」と断られた、と言う。

過去の男達よ、なんかもう少しまともな断り方があったべさ…と、大嫌いなババアのことながら、大人になった私は若き日のババアの心の痛みを想像してしまう。

私にとっては、
「ババア(祖母)は、生まれてこのかたずっとクソ意地悪いのだろう、悪魔なんだろう」
と思ってきた。
でも…もしかしたら違うのかも…とようやく思った。

誰かのことを傷つける人は、傷つけられる人がどんなふうに心を痛めその後の人生に影を落とすかを考えずに攻撃する。

ババアは、90年の人生で色んなことがあって、様々な人に傷つけられて、徐々に意地悪になったのかも知れない。意地悪が完成した時に私はババアに出会ったのかもしれない。

30うん年蓄積したババアによる数々の折檻された記憶やチクチク意地悪を赦せるわけではないけれど、
「この人もまた、傷つけられて傷ついてきたのだ。もし傷つけられずに生き延びていたら?」と考えてしまった。
そんな正月だった。